こんにちは「とある医師」です。
この記事では山口創著『子供の「脳」は肌にある』という本を紹介します。
正直言いまして、タイトルが秀逸で、内容を一言で表しています。本文はそれを補完するもので、特別新たな知見を紹介した本ではありません。
要はスキンシップの重要さを説いた本です。
初版は2004年と古く、シンプルな本書ですがボクは、育児中に悩んでいる親御さんはもちろん、自分が癒やされたい親御さんにもこの本を読むことで楽になると思います。
ちなみにボクはこの本を読んで身につけるものの重要さから、子どもの下着と家族みんなのパジャマを新調しました。
無印良品の二重ガーゼコットンのパジャマとしたのですが、着ることで逆に非常に軽く感じられて、とてもリラックスして眠れています。
下着やパジャマを見直す機会となっただけでもボクにとっては非常に有意義な本でした。
山口創著『子供の「脳」は肌にある』内容
プロローグ 頭そだて、体そだて、心そだて
第1章 子どもの心は肌にある
1 肌感覚が「性格」になる
2 「なでなで」されて育った子
3 スキンシップが脳を育む
4 「なでなで」が足りない子どもたち
第2章 思いやりを育てるスキンシップ
1 共感は模倣から生まれる
2 柔らかい体を作る
第3章 みんな「なでなで」されたい
1 子どもを「なでなで」する
2 異性を「なでなで」する
3 自分を「なでなで」する
4 なでなでは心を癒やす「子供の「脳」は肌にある」から引用
目次を書き出したものでタイトルを読めば内容は想像出来ますが、ところがどっこい、本文は学術論文や実証データを根拠に記載されている部分も多く結構本格的です。
むしろ若干難解なイメージを抱くかも知れません。
しかし、もし難しそうだなと感じても、「◯☓博士の△□論文でかくかくしかじかの実験」をした、など詳しく記した部分は読み飛ばしてしまえば、その実験から導かれる内容の記載は平易な言葉で書かれていますので心配ありません。
目次にあるよう様々な観点からスキンシップの重要性を教えてくれます。
『子供の「脳」は肌にある』の批判的なレビューへ反論
ボク自身は良書だと思う本書ですが、Amazonのレビューを見ますと☆を低く評価しているレビューもあります。その理由は曰く、
- 根拠が弱い
- 自分の主張に反する事例を批判的に書き過ぎるため、自分が該当した場合に反感を覚える
- 帝王切開を否定的に記載
ざっくりまとめると上記3点に収束しています。
根拠が弱いという意見については確かに、話の根拠がアンケート調査だったり、自身の研究が多いことから、ある程度納得出来る部分ではあります。
さらに意地悪な見方をすれば引用された論文がきちんと査読を経たか、あるいは対象人数の多寡が書かれておらず信ぴょう性が薄いという意見まで挙げられるかも知れません。
育児に科学を持ち込むことは困難
しかし、本書の対象は育児。しかも多くの場合、自己表現もままならない乳幼児が多く含まれており大規模ないわゆる「科学的」な実験など実現不可能です。
また学術論文でもない一般教養書ですので、著者の経験談や意見のみをそれらしく書いてある書物が多い中、根拠を丁寧と記していること自体がきちんと評価されるべきだと個人的には感じます。
根拠が弱い弱いとする批判は、育児書にこれ以上何を求めるのだろうか?とすら感じます。
一部の読者の過剰な反応
2点目の、与しない事柄を否定的に書いてしまい、自分が該当する場合に気分を害するという意見については確かに仰る通りの部分もあるかも知れません。
ある主張をする際に、対立する事柄を否定的に書くことは日常的に行いますが、こと育児、しかもナイーブな内容だと思わず反感まで覚えてしまうのもむべなるかなと感じます。
帝王切開への記載はごくわずか
その最たるものが3点目の帝王切開についてだろうと思います。
2020年6月23日現在☆1つとしているレビューは2つですが、いずれも帝王切開についての記載を槍玉に挙げています。
帝王切開は必ずしもお母さんが選択出来るものでではないので、そうした自分ではコントロール出来ない部分を否定的に書かれると、確かに傷つきますよね。
しかし、ボクは本書を読了後にこのレビューを見ましたが、最初の感想は「帝王切開についてそんな否定的な書き方してたっけ?」というものでした。
今回この記事を書くために全体を通して確認しましたが、確認出来た帝王切開については5行のみでした。クリティカルな部分を抜粋すると
産道を通らずに帝王切開で生まれた子どもは、後に情緒不安定など、情動面での問題が生じる可能性が高いという指摘さえある
となっています。
なるほど、この文章のみを切り取ると、帝王切開で生まれた子どもを否定している内容と捉えることも出来ます。
しかし前後の文脈を考えた場合、早期からの皮膚接触の重要性を説く中で一例として挙げたものです。決して敢えて帝王切開を否定する文章ではありません。
確かに帝王切開というナイーブな内容ですので、もう少し配慮した記載方法でも良かったとは思います。ですのでこの部分を否定したり、受け入れられないと感じる意見はあるでしょう。
しかし、前後の文脈を無視して一部の内容を切り取って、それを以て本文全体を否定するのは勿体ないのではないでしょうか。
少しでもためになるものを拾うくらいのスタンスでも
わざわざ育児書に目を通そうとされる親御さんですから、我が子に愛情をしっかり向けているはずです。帝王切開で生まれた子どもが情緒不安定かどうかは、ご自身の子どもさんを見れば自ずとわかると思いますので、これから読まれる方も心配されなくて大丈夫です。
まあ、そうした著者のスタンス自体に好き嫌いが出るのは仕方ないことかも知れませんね。
個人的にはどのような書物でも、記載内容全てに同意出来ることなど期待しておらず、1つでも良いから今日からの育児に役に立つことを知ることが出来れば良いくらいのスタンスで読む方が気楽で良いかと考えます。
(実際、本書においても医学的にも反論したい箇所はいくつか散見されますが、そうした箇所は流し読みすれば良いですしね)
『子供の「脳」は肌にある』がボクにとって「目からウロコ」だった理由
さて、こんな批判もある本書ですが、通読してボクは本当に読んでよかったと思いました。
その理由は2つあります。
- 下着やパジャマを見直すきっかけになった
- スキンシップの良さを実感し、実践に繋がった
無印良品のパジャマはとっても快適
冒頭でも少し記しましたが、本書をきっかけに我が家では子ども下着と家族みんなのパジャマを無印良品で揃えました。
夏場はTシャツ、冬はユニクロのフリースで過ごす事が多かったボクにとっては、著書の「身につけるもの」はとても重要で、赤ちゃんや子どもの下着によるストレスが影響を与えうる、という主張は強く心に響きました。
確かに、ありそうだなと。
もともと実家では柔らかめのパジャマを着ていた思い出とも合致して、無印良品なら良いものがありそうだ、と思い立ち週末に速攻で無印良品に出向きました。
そこで二重ガーゼコットンパジャマを見つけました。
二重ガーゼコットンパジャマの威力
友人の出産祝いや、新生児用に二重ガーゼが肌に優しいということは知っていたので、良さそうだな、と思って買ったところ大当たりでした。
寛ぐためにデザインされているので、「着ているのに軽い」んですね。しばらく使ってから家族みんなからの高評価に、夏用、冬用パジャマを無印良品で揃えました。
ボクは無印良品の良さに感動して衝動買いをしましたが、別段無印良品に限らず、しっかりしたコンセプトで作られたものなら下着にしろパジャマにしろ良いとは思いますが、パジャマを使っていない方は「パジャマ」文化にどうぞ触れてみて下さい。
スキンシップの良さを実感し、実践に繋がった
『子供の「脳」は肌にある』を読んで良かったもう1点が、スキンシップが大切なんだと言うことがストンと腹に落ちたことです。
そして実践につながったことです。
どなたもスキンシップが親子関係のみならず人間関係において重要なことはよくご存知なはず。でも「恥ずかしい」「いまさらスキンシップなんて・・・」など様々な理由でスキンシップを図れていないのではと思います。
スキンシップが大事だと言われても、その言葉を聞いただけでは「よし」と直ぐに行動に移せませんよね。
そんな貴方にとって、この本は改めてスキンシップが重要であることをズドンと伝えてくれます。何しろいろいろな角度からスキンシップをすればこんな良いことがありますよ、と教えてくれるからです。
そうすれば、多少恥ずかしくても「だってスキンシップは大事だから」と、スキンシップに前向きになれます。そして意識せずともスキンシップを図れるようになるでしょう。
『子供の「脳」は肌にある』とスキンシップが齎してくれるもの
またスキンシップが育児に大事という観点で本書は書かれていますが、スキンシップは施す側にも恩恵があります。相手に触れることで自分も癒やされるからです。
赤ちゃんやペットを撫でると癒やされることはどなたでも経験したり、よくよくご存知のはず。
実際にイルカに触るドルフィンセラピーという治療法もあります。
さらに、スキンシップは育児中、子ども相手だけで重要なものではなく、夫婦の間でも非常に重要なはずです。育児や仕事に疲れたパートナーを大事にいたわることはきっと大きな意義があります。
構えるなく、そっとそんなきっかけづくりをしてくれるスキンシップ。
内容はシンプルで奇をてらったものではありませんが、読むことで自然にスキンシップが身近になれる。自分にとっても子どもにっても、そしてパートナーにとっても幸せにしてくる良書だとボクは思います。ご興味ある方はご覧になって下さい。
なお初版が2004年少し古いので、新しい山口創氏の書物も紹介します。
どうぞ古くて新しいスキンシップを見直してみてはどうでしょうか。

