こんにちは「とある医師」です。
皆さん「快便」ですか?
唐突ですが、こう聞かれてどう答えますか?
「快便」と即答出来る方は比較的稀なのではないでしょうか。
反対に、実は「人知れず」便秘で悩んでいる人もいることでしょう。
他にも便秘ってほどじゃないけどスッキリしないという人もいることでしょう。
また最近は本屋さんでも「大腸フローラ」や「腸内細菌」を冠した書籍も多く、単に便秘に悩む人以外にも、便秘や腸内細菌が健康に関連することを知り、興味を持っている人もおられることと思います。
この記事では、『寿命の9割は「便」で決まる』という本に興味を持ったけど、わざわざ読む価値があるか?という最も根源的な疑問点にお答えしようと思います。
結論から申しますと、ボクは便秘の人は勿論、便秘に困っていない方も必見だと思いました。但し、既に幾つか同様の本を読んだことのある方には物足りない可能性があり注意が必要です。
以下なぜこう感じたのか。
『寿命の9割は「便」で決まる』のレビューを書きたいと思います。
『寿命の9割は「便」で決まる』を読むべき理由
Sunflower Trail and Festival, Gilliam, LA / Shreveport-Bossier: Louisiana's Other Side
「寿命の9割は「便」で決まる」の著者
「寿命の9割は「便」で決まる」の著者は文末の略歴によれば消化器疾患、腸管免疫の研究者で、「慢性便秘症 診療ガイドライン」作成メンバーの一人のようです。
診療ガイドライン作成に携わるというのは、関連学会できちんと継続的に功績を認められた方が選ばれると考えられ、その道のプロ中のプロということを意味します。
そんな便秘のエキスパートが一般向けに書いたのが本書『寿命の9割は「便」で決まる』です。
『寿命の9割は「便」で決まる』の内容
『寿命の9割は「便」で決まる』の各章のタイトルはアマゾンなどでご覧になって頂くとして全体の内容の項目を紹介してみます。
まず、『寿命の9割は「便」で決まる』というかなり過激なタイトルが示すように、便秘に伴う様々なリスクや危険性について多く説明があります。
直接的な死因にはならなくても加齢に伴いみな便秘傾向が強まり、それが二次的三次的に別の病気に繋がるという話。
便秘が多いその高齢者が排便のためにいきんで、血圧上昇を引き起こし、脳卒中や心臓発作を誘因するという話。
これらは間違いなく説得力があります。
なるほど、たかが便秘と侮るなかれ。
確かに命に多いに影響しうるなと感じさせてくれます。その他、
- 高齢者になるにつれて、男女を問わず便秘人口は増えること
- 小児でも便秘人口が増えている事実とその社会背景
- そもそも便がどのように作られるか、そして便秘のしくみや原因対策・解決策
という内容で便秘についての知識面、そして肝心の便秘対策までを軽快に教えてくれます。
「エルベス・プレスリーの死因は便秘だった?!」という興味をひくエピソードも絡めて、若干言い過ぎなのでは?なんて思う部分もありますが、便秘が引き起こす体の変化は確かにと思わせるものがあります。
また途中、日本の便秘医療における問題にも紙面を割き、読み物としても面白いかも知れません。
『寿命の9割は「便」で決まる』を読んですぐに取り組めること
Mango, blueberries, coconut flakes and granola / marcoverch
『寿命の9割は「便」で決まる』に限りませんが、この手の書籍に興味を持った方のうち、読み物として読みたい方もいれば、困っていて早急に対策を知りたいという実学的な面もあると思います。
そうした実学的な見地から本書の内容を見てみます。
詳細に書くとネタバレになりますので簡単に書きますと、
- 排便時は「ロダンの考える像」が理想的
- 運動とストレス発散が大切
- ダイエットは便秘を招く
- 役に立つ食物繊維と、採ってはダメな食物繊維
- 水分、乳製品
- ビフィズス菌とオリゴ糖
- 本当に困った時の便秘解消に役立つ薬品名
などが記載されています。
中でもダイエットは便秘に直結、という点はダイエットに励む方にとってはぎょっとする事実ではないでしょうか。
他にも明日からでも日常生活の中で簡単に試すことが出来ることがらも多く紹介されており、参考になると思います。
また最後の便秘解消の医薬品は薬局で購入出来るものもあり、本当にお困りの方にはこのページだけでも読む価値はあるかも知れません。
「寿命の9割は「便」で決まる」を読んで驚いたこと
このような内容のこの本を読んでボク自身が驚いたこと、学んだことはいくつもありますが、まず何が驚いたかと言って、「快便=バナナうんちが1分以内に排泄できること」ということでした。
1分って早くないですか?!
個人的にはなかなかハードルが高いなと感じました。
でも、「今日は調子良かったな」という感覚はどなたにもあるかと思いますが、特別良かったと感じていたあの感覚が、本来の快便であるということはある意味衝撃でした。
その他、冒頭の処方薬がセンナや酸化マグネシウム一辺倒になっている話は、処方する側からしても耳に痛いところです。
患者さんと医師の会話風景を再現した部分がありますが、見に覚えのあるリアルなもので、浅学だった自分を恥ずかしく感じる一コマです。
また「排便回数が週3回未満は便秘」という定義にもびっくりしました。
この定義だと、気がついていなかったけど「自分も便秘だったんだ・・・」という方も多いと思います。
「便の性状や回数なんて気にせず、排便さえしていれば便秘じゃない」ましてや「残便感って何?」という態度がいかに便秘を理解していない考えであるかときちんと説明してくれることで、人知れず困っていた方も分かってくれた、と安堵することと思います。
それに、大きな蠕動運動が1日に1-3回程度あり、便意に繋がるという「大蠕動」。こんな腸の特徴も初めて知りました。
確かに朝食後、お腹が動いた感覚と同時に便意が出て、そのタイミングでトイレに行くと快便、という覚えはあります。その背景を説明してもらうことでなるほどと思いました。
他にも個人的には、食物繊維でも効果の違いが大きいこととそれらの具体的な紹介。
キーワードはは水溶性・不溶性です。
そしてビフィズス菌とオリゴ糖が軽症の人には役立つという点を改めて確認出来て大いに安心しました。
ボクの便秘体質から脱却まで
というのも、これは以前別記事でも少し書いたことがありますが、ボク自身数年前から朝食の多くをオールブラン或いはグラノーラにヨーグルト、ナッツ類を少し混ぜ、その上にオリゴ糖ときなこをかけて食べるという食生活を行っているからです。
(こう書くと非常に健康志向だなと思われるかも知れませんが、複数のグラノーラを適当に混ぜるだけで味が変わるため飽きずに済みますし、寝坊がちなボクにとっては、何も考えずに非常に短時間で簡単に準備出来るということが現実的な理由です)。
ボク自身は学生時代、1週間に1度排便があるかどうかという完全に重症便秘体質でした。
あまり辛さを実感しておりませんでしたが、今思えば腹痛や体の不調を自覚してたものの、「便秘」という言葉も知らず、それが普通だと思っていました。
しかし医師として働くと、必ず患者さんと便通についてお話する機会があり、そのうちにどうやら自分は普通ではないようだと気がついた、という恥ずかしい歴史があります。
そんなボクはこのような朝食スタイルを継続している現在の状態は、毎日が快便とまではいきませんが、自分としては十分満足しています。
「寿命の9割は「便」で決まる」の残念なところ
非常に参考になる本書ですが、いくつか留意点を挙げておきます。
まず、よくある話ではありますが、タイトルが個人的には残念に感じます。
「〇〇の9割は□✕で決まる」というタイトルはベストセラーをきっかけに様々な書籍で目にしますね。
本書に限らずタイトルは著者より編集・販売側の意図が大きいようですが、やはりワンパターンな感は否めませんし、9割という数字に根拠はなさそうです。
また内容についても、もう少しコンパクトになれば、とも感じました。
著者としては便秘の危険性を述べることで便秘対策の重要性を示したいために紙面を多く割いており、タイトルにも繋がるのだと思いますが、あれもこれも便秘と関連付け過ぎて、若干情報過多な印象を持ちました。
基本的には読み易いのですが、若干まとまりがない印象を持ち、もったいないなと感じました。
「寿命の9割は「便」で決まる」を読むのに向いている人と向いていない人
And how mismatched are?) / _Nezemnaya_
「寿命の9割は「便」で決まる」に興味を持った方の中で、とにかく早く解決策を教えて!という方には本書はやや注意が必要です。
本書は内容として、便秘の危険性やしくみに多く紙面を割いており、それが説得力を生み、その後の対策についても受け入れやすい構成になっていると思います。
そのため、ただ便秘を手っ取り早く解決策を教えて欲しいという方のニーズにはやや不向きかも知れません。
こうした方は「◯✕を食べるだけで」「◯●体操をするだけで」簡単に治るなど、「独自の方法で簡単に改善出来る!」という、知る人が知るとっておきの解決策を期待しているはずです。
ダイエットや健康本でありがちですが、生活習慣や食事、ストレス、年齢などに大きく左右される便秘も、改善にはやはり基本的な事柄が大切であり、急がば回れが正解だと思います。
そうした方にもぜひ読めば参考になる事柄はたくさん書かれていると思いますが、こうした点は読む前に知っておいても良いかも知れません。
そしてもう一点。
センナやマグネシウム製剤一辺倒の日本医療の問題点や、漢方と新たな便秘専用薬剤の紹介は本書の一つの見所で、人によってはこの点のみでも読む価値は十分あると思います。
ただ、その他の便秘対策という観点においては、これまでに便秘についての本をすでにたくさん読んでいる方にとっては、多少物足りない可能性があります。
アマゾンでもそれを理由に低レビューの口コミもあります。
本書は新発見や独自の内容を披露したものではありません。
従って、この本は
- 簡単に実践出来て、即効性のある便秘対策をとにかく教えて!
- 便秘に関しての従来知られていない新たな知見をとにかく教えて!
という方には不向きで、
- 便秘の危険性とその成り立ちをしっかり学び、その上で解決策まで知りたい
という方向けと言い換えることが出来そうです。
【健康読本】便秘とも無縁の人も読むべき『寿命の9割は「便」で決まる』レビュー まとめ
『寿命の9割は「便」で決まる』のレビューとしてまとめると、便秘のガイドラインを担当するエキスパートの方の一般向け著書であること。
若干タイトルで損をし、内容にまとまりがない印象も無いわけではないですが、便秘の危険性、そのしくみをしっかり教えてくれ、その上で明日から取り入れる便秘対策まで丁寧に教えてくれる良書と考えます。
敵を知り己を知れば百戦殆うからずの格言通り、「便秘を知り自分の生活習慣を知れば快便殆うからず」。
この本を読んで「バナナ1本分を1分以内に」という快便生活を目指しては如何でしょうか?
最後に
上でも述べたようにボクは長い間、便秘を患っていました。それだけではないでしょうが、現在はシリアルにいろいろトッピングした朝食を食べて、快便生活を送っています。
シリアルには食物繊維の多いグラノーラとオールブランを飽きないようにいくつか揃え、その時の気分で適当にボールに盛っています。
またナッツ類が健康に良いと知り、トッピングにも加えています。
その他きなこ、ヨーグルトをかけ、オリゴ糖も適当にかけてと、文字で書くと大変ですが、準備期間は1分以内で時短にも役立っています。
仕事柄、昼ごはんを満足に食べられないことはざらで、一息つけるのが夕食時や深夜なんてこともあるので朝食抜きはパフォーマンスが落ちてしまうため回避したい。だけど、時間をかけたくない。
便秘対策に特化したというよりは、どうせ朝食は食べる方が良いのなら、時短かつ便通に良いものを、と消極的な理由で始めたもので、ここまで便通が改善するは思わぬ副産物だったと感じています。
ビオフェルミンと食物繊維が便通に良いことは比較的よく知られていると思いますが、ビフィズス菌生育に役立つオリゴ糖はあまり知られていないようで、周囲にオリゴ糖を勧めた結果、あれ良かったねと言われることも多いです。
オリゴ糖は簡単に試すことが出来るので興味のある方にはお勧めです。
但し「寿命の9割は「便」で決まる」にも書かれているように食物繊維やオリゴ糖、ビフィズス菌などは比較的軽症の方にお勧めと書かれており、ご留意下さい。
またオリゴ糖は当然としてグラノーラやオールブランも糖類を多く含むため、摂取量にはご注意下さい。
下記にアマゾンのリンクを張っておきますが、グラノーラやオールブラン、ナッツ類は近所の実店舗の方が安いこともあります(特にナッツ類は顕著です)。
対してオリゴ糖は、ボクは下記北海道てんさいオリゴ 1kgをアマゾンで定期購入しています。
こちらは実店舗では置いてなかったり、置いてあっても500gの製品しかないなど面倒なことも多く、1kgと重いこともありアマゾンを利用させてもらってます(なぜかボクの周囲では少なくとも実店舗より安いです)。
ただ、残念ながら少し前から2本以上でしか購入出来なくなったので、初めての場合は、あわせ買い対象にはなりますが500gの方をまず試してみては如何でしょうか。
この食生活を始めた数年前は、全然知りませんでしたが、ネットで探せば世の中には結構オリゴ糖製品は販売されているようです。
またオリゴ糖を選ぶ際に、実は含有割合の違いもありますし、オリゴ糖そのものにも複数種類があるそうです。
ボクも当初はスーパーでよく置いてある「オリゴのおかげ」とオリゴ糖含有量が倍になった「オリゴのおかげ ダブルサポート」などいろいろ試してみましたが、容量が少なく、また粘度が低いため直ぐに使い切ってしまい困ってしまいました。
コーヒーなどに少量ずつ入れるのならばこちらの方が適しているかも知れません。
また含有量も高ければ良いというものでも無いようで、ボクの場合容量が多く、糖度も粘度も過不足ない北海道てんさいオリゴ 1kgを愛用するに至りました。
アマゾンには他にも高評価のオリゴ糖製品がたくさんあるようですし、皆さまにとって好みのものを探されても良いかも知れません。
快便生活に参考になれば幸いです。