こんにちは「とある医師」です。
Photo:Warning By buggolo
今日は現役医師の観点から「赤ちゃん子どもを守るために、絶対回避して欲しい身の回りに潜む3つの意外な危険」についてお話します。
キーワードは次の3つです。順に書いていきたいと思います。
- タバコ
- ボタン電池
- 豆
タバコが赤ちゃん子どもにとって危険な理由
誰にって?それは赤ちゃんや子どもにとってです。
タバコの吸殻のお話
色んな物に興味を持っては、口にしますし、試しますよね。
ジュースを飲むだけならもちろん問題ありません。
でもそれが、灰皿代わりに利用された缶だったら・・・。
空き缶の中のタバコ
- 少量の液体のみ
- そこに吸い殻が入ってあれば、少量の液体に多量のニコチンが溶けた状態
- そして水に溶けたニコチンは、体内での吸収が非常に早い
- さらに悪いことに、赤ちゃん子どもは大人に比べて身体が小さい。
赤ちゃん子どもとタバコの関係、まとめ
Batteries / James Bowe
そもそもボタン電池、ご存知でしょうか。
リモコンなどで利用される、薄い電池です。
小型化され、また容量も大きくなったものもありますので実は様々な場面で活躍してくれている代物ですが、赤ちゃんや子どもとセットとなると非常に脅威となります。
赤ちゃん子どもとボタン電池の組み合わせ
胃に辿り着いたボタン電池の85.4%は72時間以内に便として自然排泄されるという報告もあります(#)が、ボタン電池に関してはその形状から、食道当たりで引っかかる場合も多いようです。
ボタン電池の性質
ボタン電池を赤ちゃんや子どもが飲み込んでしまうと
ボタン電池が食道に留まると
ボタン電池を飲み込んで症状が出現するまでは数時間以内
ボタン電池のまとめ
これをまとめると
↓
ボタン電池で特に気をつけたい年齢は
何でも口にする赤ちゃんも一見危険ですが、実は報告として多いのは1−3歳です。
好奇心が旺盛で、かつ蓋を開けたりといった高度な作業を出来るようになる年齢、ということなのでしょう。
赤ちゃんや子どもを、ボタン電池から守る方法
残念ながら完全な予防策はありません。
なぜなら予想外のことを引き起こすのが赤ちゃんや子どもです。
でも、親が工夫することで少しでも可能性を減らすことは出来ます。
それは、単純なことですが、
- リモコンの蓋などボタン電池を使用している部分を簡単には外せないようにする
- ストックしているボタン電池を厳重に隔離する
こういった基本的なことを徹底することでしょう。
1−3歳のお子さんや電池に限った話ではなく小さいお子さんをお持ちの方は、もう一度家の中をチェックされてはどうでしょうか。
「豆」が赤ちゃん子どもにとって危険な理由
この「豆」ですが、例えでも比喩でもなく豆類を指しています。
枝豆やピーナッツ、節分の豆なんてものもあります。
え、離乳食にも枝豆を使ったメニューよく紹介されているけど・・・?
と思われた方もいらっしゃるでしょう。
アレルギー症状をお持ちの場合は別ですが、お料理として豆類を用いること自体は特段問題ありません。
今回問題となるのは、豆の成分ではなく、その食べ方です。
蒸した枝豆やピーナッツをそのまま食べる。これが極めて危険なんですね。
赤ちゃん子どもに「豆類」をそのまま食べることが危険な理由
もちろん、赤ちゃんや子どもも目一杯むせます。でも、むせても一旦入り込んでしまった丸い豆は気管の奥に入り込み、なかなか外に出せません。
豆類を赤ちゃん子どもが誤嚥したら・・・
気管の中に豆類が入り込んだ場合、豆類と周囲で化学反応が起こり炎症を来す化学性肺炎という重篤な肺炎になってしまいます。
また、そもそも息の通り道である気管に異物があると、呼吸が出来なくなる可能性もありますので、異物=豆類を摘出しなくてはなりません。でもその摘出手術はまさに命がけと言っても決して過言ではない手術になります。
赤ちゃんや子どもにとって豆類が危険な理由のまとめ
これらをまとめるとこうなります。
意外に知られていない「豆類」の危険性
たったの「豆」でそこまでなるの?と思われる方もいらっしゃるでしょう。
そんな危険なのに今まで知らなかったのはなぜ?とも。
育児書にもあまり周知されていないのは恐らく頻度が圧倒的に低いからです。
もちろん教科書などには記載されているので知識はもっていますが、ボクの周りにいる小児科医や耳鼻科医のうち、中堅と言われる年齢層ですら、誰もが頻回に経験するわけではない、というような頻度です。
ですから一般の方が必ずしもご存じなくても仕方がないとも言えます。
でも自分の赤ちゃんや子どもの場合、絶対に「仕方がない」では済みませんよね。
赤ちゃん子どもがいる家庭で「豆類」で気をつけて頂きたいこと
これはもう、豆類をそのままの形で摂取しないこと。この1点が一番重要だと思います。
先述したように、豆類の成分自体が問題ではありませんので、栄養面から豆類を摂取されることは全く問題ありません。
豆をそのままの形で食べないこと。
特にピーナッツなどはお子様用のおやつにも入っていることがあり、お父さんお母さんが気をつけてあげることが大切です。
また、その他の注意点として
- 食べている最中に、急に驚かせたりしない、泣かせたりしない
- 食べながら走ったり遊んだりさせない
- 車や飛行機などでの移動中に食べさせない
- 豆を食べさせる時は潰してあげる
ベビーフードには豆類がそのままの形で入っていることも
ベビーフードだから安心と思って食べさせた結果、豆を誤嚥し重篤な事態に陥る可能性があります。
実際、学術雑誌にも取り上げられ、注意喚起を促されています。
赤ちゃんや子どもと豆類の付き合い方
食べる前に(そのままの形の)豆類を取り除く。でも栄養価の高いものですので与える時は、小さく潰す。この一手間でずいぶんリスクは軽減するはずです。
たった、それだけで、赤ちゃんや子どもを守ることが出来ます。
是非覚えておいて下さい。
じゃあ、いつから子どもは豆類を食べていいの?という問いについては、残念ながら明確な答えはありません。大人でも誤嚥した場合には同様の事態が予想されるからです。
でも、歯が生えそろって自分で噛めるようになれば、ある程度危険性は下がると思われるので、お子さんの成長具合と相談されると良いと思います。
ボク自身の目安は小学校入学すれば良いのでは、と考えています。
赤ちゃんや子どもを、身の回りの危険から守るために
タバコ、ボタン電池、豆類。
実は身の回りには赤ちゃんや子どもにとって危険がいっぱいです。
しかも、ボクら大人にとっては全く危険でないにも関わらず、赤ちゃんや子どもの目線では非常に危険な場合がある、という厄介な問題です。
- 我が家は、自分は気をつけているから大丈夫
- うちの子は心配ない
普段は気をつけていたんですけど・・・。
頭の隅においておくだけでもいいので、是非覚えておいて下さい。
尚、赤ちゃんや子どもの身の回りで引き起こされたトラブルについて、今回挙げたような事例も含めて、日本小児科学会が広く公開しています。
興味を持たれた方は、医学用語も用いられていますのでやや難解な面もありますが、読むことは必ずしも難しくなく、むしろこんなものでこんなことになるの?!と思われるケースが多数取り上げられていますので、見てみて下さい。
→日本小児科学会該当ページはコチラ
こうした記事が少しでもきっかけになれば幸いです。
出展
#日本小児科学会雑誌2009年8月号